次世代へと引き継ぐ「美味しい」日本の魚文化
  • 0
  • 次世代へと引き継ぐ「美味しい」日本の魚食文化
    のいただきます。

長崎市たちばな漁業協同組合

戸石とらふぐ

とらふぐの養殖量日本一を誇る長崎県。県下三大産地の一つに数えられるのが長崎市戸石地区。戸石とらふぐとして出荷している、長崎市たちばな漁業協同組合に、とらふぐ養殖のこだわりや販促活動などについてお話をうかがいました。

長崎市たちばな漁業協同組合について教えてください。

平成17年に戸石、網場、矢上の3つの漁協が合併して組織されています。橘湾北西部に位置し、橘湾を主漁場として底びき網漁業、タチウオ一本釣漁業をはじめ、とらふぐを主体とした魚類養殖漁業が営まれています。

橘湾を主漁場とした底びき網漁業では、1年を通して様々な魚種が水揚げされる。

このあたりの海域の特徴を教えてください。

長崎半島の東岸と島原半島の西岸に囲まれた橘湾は、有明海潮流の出入口で魚の生息条件に恵まれています。底びき漁では、ガサミ、クルマエビ、クマエビ、ヒラメ、ハモなどが獲れます。

緊急事態宣言によってどのような影響が出ましたか。

とらふぐでいうと、2020年は長雨や病気などの影響で生産量が昨年の半分以下となりました。山口県や関西エリアへの出荷が多かったのですが、大阪などにも緊急事態宣言が出たので影響は大きいです。豊洲市場にも出荷していましたが、ストップしてしまっています。

戸石地区に隣接する牧島で行なわれている、戸石とらふぐの養殖。恵まれた環境を生かして育てられている。

とらふぐの養殖について教えてください。

あまり知られていませんが、長崎県はとらふぐの養殖生産量が日本一です。その長崎県の中でも、新松浦、九十九島、戸石が3大産地となっています。戸石は、地区に隣接する牧島付近で養殖をしていますが、島影があるなどで養殖に向いています。

どのようなところに注意していますか。

とらふぐは、約1年半かけて育て、出荷しています。エサはオオナゴなど他のエリアではあまり使うことのない高品質なものと、魚の体調に合わせてビタミン剤などのサプリメントも与え、病気にならないように注意しています。大変なのは、歯切りです。とらふぐがお互いに噛んで傷つけないようにするため、約5回にわたって歯切りを行なっています。(写真上:光丸水産/里喜仁さん)

これから課題を教えてください。

先程もお話した通り、長崎県はとらふぐの養殖生産量日本一なのですが、主な出荷先である山口県や関西に出荷するにはやはり運賃が掛かります。そうすると価格面で厳しいものがあります。ですから、もっともっと地元の長崎県でも食べられるようにしないといけません。その取り組みとして昨年戸石のとらふぐをPRするためラッピングトロッコ列車を走らせました。長崎県が養殖生産量日本一ということと、美味しいので食べてくださいということを広く県民に周知いたしました。
また、長崎市と連携して、地元の飲食店でフェアも開催していますし、スーパーでは1人前のとらふぐ刺身セットも販売して人気です。さらに、これからはホームページを充実させて、インターネットで一般消費者の個人対応をするなど、従来より販路を広げたいと考えています。まずは戸石の、長崎のとらふぐを知って欲しいですね。そして、とらふぐは価格が高いイメージがあるかもしれませんが、お手頃なので、ぜひ食べてみて欲しいですね。

戸石とらふぐの知名度向上など、積極的な取り組みを行なっている道下雅久参事。

生産者×シェフ SPECIAL INTERVIEW